アメリカが先導する「ディストピア的世界」の予兆 ビジネス界も多様性に「ノー」と言い始めた

トランプ大統領の一般教書演説は、アメリカの政治的分裂だけでなく、より深遠な問題を内包していた。
アメリカ国内において、非白人のアメリカ人や女性を対等な存在と見なすことを認めないのであれば、非西洋諸国、特にアジアやアフリカの国々や女性指導者たちと、海外で対等なパートナーとして関わることなどできるのだろうか?
現在の危機は、アメリカを内部から弱体化させるだけでなく、世界のアメリカに対する見方を変えつつある。かつては民主主義と人権の擁護者とみなされていたが、今では多くの人が、平等を説きながらそれを積極的に損なう国だと見なし始めている。これが続けば、アメリカは影響力を失うだけでなく、尊敬も失うだろう。
何十年もの間、アメリカは人種やジェンダーの多様性を擁護してきた。アメリカにおける公民権運動は世界の先例となった。アファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)は、世界中の雇用や教育に影響を与えた。多様性が強さにつながるという考え方は、単なる国内のスローガンではなく、アメリカのソフトパワーの一部であった。
社会上層部で多様性が後退
しかし今、その考え方は崩れつつある。各州はDEI(多様性・公平性・包括性)プログラムを禁止し、アファーマティブ・アクションは解体され、企業の多様性への取り組みは静かに後退している。
各業界で、黒人やマイノリティのリーダーが企業や政府のポストから排除されている。全米労働関係委員会からグウィン・ウィルコックス、統合参謀本部議長からチャールズ・Q・ブラウン・ジュニア将軍といったリーダーが解任されたことは、アメリカ社会の最上層レベルにおいてリーダーシップの多様性が後退していることを示している。
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