たしかに、今回のS:HEVは、発進時も加速時もモーターが作動して、トルクをしっかり上乗せしてくれる。
アクセルペダルのちょっとした踏み込みに対しても即座に応答する加速感は、これまでスバルのCVT車(ベルト駆動の無段変速機)のフィールとも異なるものだ。

バッテリーはこまめに充電されるので、“アシスト切れ”はなく、モーターによるスムーズな加速感は、思った以上に長くつづく。それに車内は静か。
ストロングハイブリッド化にあたって、ダンパーとブッシュの特性を見直したという足回りは、路面の凹凸をていねいに吸収し、乗り心地も良好だ。
ミラーサイクルエンジンを採用
もうひとつ、スバルにとって重要だった課題は、走行燃費だ。スバルが低重心やバランスのよさなどの点からこだわる水平対向エンジンは、ずっと燃費を課題としてきた。
2気筒ずつ、上から見て線対称に配置される水平対向エンジンは、シリンダーヘッドが左右にひとつずつあるなど、直列エンジンに対して部品点数が多い。
部品点数が多いことは、すなわち重量増を意味する。同時に摺動部分が増えることで、摩擦が燃費に影響を与える。走りと燃費は、スバル車にとってトレードオフの関係なのだ。

排気量は2498ccと、マイルドハイブリッドの1995ccよりだいぶ大きくさなった。通常のエンジンのオットーサイクルでなく、ミラーサイクルを採用したのは、この機構の特徴である燃費のよさゆえ(のはず)。排気量を拡大したのは、少しパワーが落ちるミラーサイクルのネガをカバーするためだろう。
トヨタ(THSⅡ)から技術提供を受けたのは、トランスアクスル部分。駆動用と発電用の2つのモーター、前輪用ディファレンシャルギア、電子制御カップリングで構成されている。
エンジンは先に触れたとおり、スバルの水平対向エンジンだし、駆動系も同様だ。AWDモデルでは、物理的なプロペラシャフトで後輪に駆動力を伝えるのも、やはりスバルのこだわり。THSⅡのように、後輪をモーターで駆動するシステムではない。
先に足回りについて少し触れたが、スバルのエンジニアによると、荒れた路面での走行性と乗り心地をバランスよく両立させるのも、重要な課題だったそうだ。
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