「京アニ事件」報じられなかった被告の病的体験 「社会的孤立」に限定されない複合的な原因があった?
2019年7月18日、死者36名、負傷者33名という大惨事となった京都アニメーション放火殺人事件。京都地裁は青葉真司被告に死刑の判決を下したが、被告側が控訴していた。しかし、2025年1月27日に被告が控訴を取り下げたことが判明し、死刑判決が確定することとなった。
青葉被告は、この犯行によって自身も全身に大やけどを負い、一時は生命も危ぶまれる状況だったが、懸命な救命措置の結果一命を取り止め、捜査や裁判にも何とか耐えられるまでに回復した。
裁判の開始前には青葉被告に対する精神鑑定が複数回実施された。さらに、裁判では被害者本人や遺族と青葉被告が直接質疑をする機会もあった。
心理的な問題は裁判を経てようやく明らかに
私は犯罪心理学の専門家として、事件直後や裁判中に複数のメディアから取材を受けた。
事件の直後には、どうしても「社会」的要因の報道が多くなる。当時の被告の生活ぶりや仕事、人間関係などをメディアはいろいろと取材をして報道する。
しかし、幼少期の家庭環境はなかなか出てこないし、医学的な問題や心理的な問題に対しては、報道は皆無といっていい。裁判の過程を見ないと、これらの重要な要因について何もわからないからだ。
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