「京アニ事件」報じられなかった被告の病的体験 「社会的孤立」に限定されない複合的な原因があった?

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青葉被告は2名の医師から鑑定を受けている。第1の鑑定医は、被告は統合失調型パーソナリティだと診断し、これはパーソナリティの逸脱にすぎないから責任能力には影響がないと述べている。

一方、第2の鑑定医は、被告は統合失調症スペクトラムであったと診断し、少なくとも部分的には責任能力が損なわれていたと述べた。

被告は、中学に上がったころから、幻覚妄想のような体験が始まっている。しかし、定時制高校には皆勤で通学し、友達にも恵まれ非常に安定した生活を送っていた。この時期は、精神的にも非常に安定し、特に病的な体験はなかったようである。

病的体験が前面に出るようになったのは、就職をしてからである。青葉被告は、京アニの女性監督とネットでやり取りして恋愛しているという思い込みをし、自作の小説を京アニに盗まれたという主張を展開するようになった。

また、常に「闇のナンバー2」という得体の知れない人物から監視されていたとも主張するようになった。京アニに応募した彼の「作品」が落選したのは、この「闇ナンバー2」による陰謀だと思い込むようになっていった。

犯罪の原因は複合的

こうした妄想的な思考は、事件の前後を通してまったく揺るがず、このような病的思考がなければ、これほどの事件が生じることはなかった可能性が大きい。

ただし、精神障害自体が犯罪に直結するという短絡的な推測は慎むべきである。先にのべたように、犯罪の原因としては、環境や病前のパーソナリティや価値観、行動傾向なども組み合わせて慎重に検討する必要がある。

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