「このマンガがすごい!2025」から読み解く"異変" 刊行20年、ベストテンはどう変わってきたか?

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『環と周』は、『大奥』『きのう何食べた?』などで知られるよしながふみの連作短編集。タイトルどおり、「環(たまき)」と「周(あまね)」の名を持つ二人が時代や性別を超えて何度もめぐり会う。

よしながふみ作品への入り口としても好適

現代では中学生の娘を持つ夫婦として。明治の世では女学校の同級生。70年代には独身女性と同じアパートに住む少年。戦後の復員兵と元上官。江戸時代には幼なじみでありながら仇敵として再会した男と女。1話ごとに状況や関係性は違えど、分かちがたい因縁で結ばれた二人の多様な愛の変奏曲に息を呑む。

単行本描き下ろしのエピローグできれいに円環が閉じる構成にも感嘆。『大奥』や『きのう何食べた?』のような長期連載作と違って、単巻ものなので手に取りやすい。よしながふみ作品への入り口としても好適だ。

環と周
よしながふみ『環と周』(集英社)

2位以下にも、今の時代を反映した作品が多くランクインしている。この生きづらい社会で、いかに自由に心健やかに生きるかを描いた[オトコ編]5位の『路傍のフジイ』(鍋倉夫/小学館/既刊3巻)、8位の『この世は戦う価値がある』(こだまはつみ/小学館/既刊3巻)は、特にビジネスパーソンに刺さるだろう。

また、[オンナ編]3位の『ボールアンドチェイン』(南Q太/マガジンハウス/既刊2巻)、4位の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(谷口菜津子/ぶんか社/既刊2巻)、7位の『スルーロマンス』(冬野梅子/講談社/全5巻)は、多様性やジェンダー格差の問題を考える貴重な手がかりとなる。

今回の『このマンガがすごい!2025』は、2005年末刊行の第1弾『このマンガがすごい!2006』から数えてちょうど20年目。マンガの年間ランキング本の歴史を振り返れば、1996年の『このマンガがえらい!』(宝島社)、2001年の『このマンガにハマる!』(二見書房)、2004年の『このマンガを読め!2005』(フリースタイル)といった先行例がある。それ以前にもマンガ情報誌「ぱふ」(雑草社)の読者投票による年間ベストテン特集などがあった。

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