ふかわりょうさん「スマホを置いて散歩しよう」 一人は孤独じゃないし、孤独は不幸でもない

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──靴ずれ感を言葉にしていると。

そうです。僕が文章を書くのは息継ぎに近い。書くことで、何とか呼吸をしている。普段、多くの仕事を頂き、人と接する機会にも恵まれているので、外形的には孤独と映らないかもしれません。ただ、精神的な孤独というのか、窒息しそうなくらい苦しい時がある。「溺れる羊」のように。

──『世の中と足並みがそろわない』には、アイスランドの羊の群れの中で仰向けに倒れて足をバタつかせている「溺れる羊」を、ふかわさんがひっくり返してあげるエピソードが出てきます。世の中には、溺れる羊のように苦しんでいる人がいるかもしれません。

いっぱいいると思います。

──ひっくり返してくれる人に、出会えるでしょうか。

苦しんでいる人を救うのは、その人を救いたいと思っている人とは限らず、むしろ救う意思を持っていない万物である事例のほうが多いのでは。  

寺山修司は「書を捨てよ、町に出よう」と言いました。僕は「スマホを置いて、散歩に出よう」と言いたい。

窒息しそうな時、スマホの世界に回復剤はないと思う。スマホを置いて、外を散歩し、ダイレクトに世界と対峙したほうが、心身には絶対に良い。あえて「絶対に」と言っておきます。

より道にこそ豊かさ

──日々の生活のなかで余裕やゆとりがなくなったと感じます。空き時間はSNSやメールの返信をしなければならない。どこに行くにも最短距離をスマホで調べ、最短時間で行かなければ時間を無駄にしたと感じるようになりました。

スマホは最短ルート、最速ルートを教えてくれるので仕事上はとても便利なのですが、僕は「逸脱する時間」にこそ豊かさがあると信じている。人生のすべての局面を「最短ルート」で走っていたら、絶対に苦しくなる。自分で自分を苦しめることになると思います。

先人達が言ってきたように、人生で大切なのは、寄り道のほうです。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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