テレビが選挙報道をやめた結果「起きた大逆転」 玉木雄一郎氏は「YouTube」をどう使ったのか
私もコメント出演した11月2日放送のTBS「報道特集」で、選挙報道が減っていることについて特集が組まれていた。
このままでは選挙報道はYouTubeにとってかわられる
なぜテレビ局が選挙報道を控えるようになったかをテレビが報じたのは初めてだと思う。簡単にいうと、安倍政権がクレームをつけて萎縮したのだ。2014年に当時の自民党副幹事長・萩生田光一氏の名で選挙報道の公平を求め、「出演者の発言回数や時間」も同じにする旨の要望を各キー局に書面で送った。
こういう「量的公平」は公平性の一部でしかない、とかなんとか猛反論すべきなのに、なし崩し的に萎縮していった。その結果、量的公平どころか、選挙報道そのものを公示日以降控えるのが当たり前になってしまったのだ。細かくチェックされてつべこべ言われるのが嫌になったのだろう。ただ、各局で「今回の選挙報道は○時間に控えるように」などとお達しが出るわけでもないらしい。互いに顔を見合わせながら、もやもや萎縮しただけだ。なんとも情けないことだ。
選挙期間中の報道は控えても、当日の開票速報番組には各局並々ならぬ力を入れる。だが当確のタイミングが局によって違っていて、視聴者からすると困惑してしまう。出口調査は合同でやれば済む。その分、エネルギーを選挙期間中の報道にかけるほうが国民のためになる。
「報道特集」では私が特に強く言いたかったこのコメントが使われた。
「このままほっておくと選挙報道はYouTubeにとってかわられるし、民主主義の担い手の資格を失うということだ」
テレビ局は総務省の会議などでよく「民主主義を守る」役割があると語る。民主主義のシステムで一番大事な選挙を報道しないで、何を言っているのだろう。選挙報道をしないのは、民主主義の担い手を放棄したも同然で、ひいては娯楽番組を支える信頼もじわじわ崩れる。放送局の根幹的価値が崩壊し、ただのコンテンツメーカーになるのだ。それでいいのか、すべてのテレビ局に問いたい。
だが私は、これを機にテレビ局に選挙報道を頑張ってほしいとさえ思わない。「報道特集」が反省しても、実際には変えられないだろう。ましてやこの番組を見た全国のテレビ局が次の選挙から考え直すとは思えない。
萩生田氏は今回かろうじて当選したが、テレビが選挙報道を前のようにやっていれば、自民党支持者が見直してくれてもっと楽に勝てた可能性がある。2014年の要望書が遠因となり萩生田氏は自分の首を絞めたと言える。
そしてテレビ局はこの選挙でYouTubeに負けた。勝ったのはYouTubeを通じて国民民主を支持した若者層で、自民党とテレビ局は2014年以降の報道萎縮でともに自滅したのだ。だがテレビ局は「若者が選挙に行かないのは私たちの責任だ」と見当違いの反省をするだけだろう。
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