コロナで消えた「駅ナカジュース店」驚きの現在 拡大、派生、衰退…そして新たな出店が始まるまで

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このようなジューサーバーの復活の理由は、少ない人数で効率的に回せる業態にある。新大阪駅構内など家賃が高い場所であっても、人件費が低いため、売上さえ出せれば利益が上げやすいのだ。この業態は、作業を「レジ」「提供」「作る」の3つに特化しているため成立している。

オレンジカラーの店舗は見た目もかわいく、大学生、高校生を中心に和気あいあいと働ける環境のため、アルバイト募集に集まる人数も多い。意外と男子学生も多く、一度入ったメンバーは大学卒業までなど、長期間働く人がほとんどだという。結果として、提供スピードの速さや、接客スキルの向上にもつながっている。

ジューサーバー
オーダーから提供までの時間は15~20秒。会計をしている際、横で同時に別のスタッフがジュースを作っている(写真:カフェ提供)

この人件費の低さに対して、売上に対する原価率は少し高めだ。主力のミックスジュースなどは30%に達しているという。材料となる、国産のリンゴや小松菜は価格変動の幅が大きく、バナナやパイナップルなど輸入品も、円安の影響を受けやすいからだ。

だがそれさえも、人件費を抑えることで賄えるため、ジューサーバーは駅ナカ、駅周辺など通行量が多い場所なら十分に健闘できるのだ。「弊社ではカフェや居酒屋なども経営していますが、ジューサーバーはトップクラスに利益率が高い業態になります」と寺村氏は語る。

ジューサーバー
店舗や季節によっても異なるが、カウンターには、6~8種類程度のジュースを入れたジューサーがカラフルに並ぶ(写真提供:カフェ)

さらに、立地によって客層が変わるため、価格やメニューも店舗によって微妙に変える工夫をしている。

例えば、昔からのリピーターのビジネスマンが多い京阪京橋駅ホーム上の店は、原価率高騰のなかでも値上げは抑えめだ。ひらかたパーク店は家族連れがスムーズに購入できることを意識して、通常R・L・XLの3サイズのところを、ワンサイズ・ワンコイン(500円)中心の展開に。さらにひらかたパーク店では、ホイップクリームやタピオカを使ったスイーツ系メニューも充実。新大阪駅新幹線改札内の店は、インバウンドに人気のフレッシュジュースを欠かさない。

ジューサーバー
現在のドリンクのサイズは、R・L・XLの3タイプ。以前はこれに加えて、ひと口で飲み干せるSサイズがあった(写真:カフェ提供)

ギリギリの忍耐が復活への架け橋に

ジューサーバーには今、大型商業施設など、リーシングの声がけが複数あり、前向きに出店を検討している。「次は新大阪駅のように人の往来が多く、待ち時間ができる立地で考えています。梅田や難波、空港などにも積極的に出店していきたいですね」と寺村氏。さらに、元々広く展開していた京阪沿線で空き物件に再出店することにも意欲的だ。

もしもコロナ禍で耐えきれず全店閉店していたら、現状のV字回復はなかった。社員も別部署などに異動したり、退職を選んだりして、ノウハウの継承もそこで途絶えていただろう。だがギリギリ2店舗をなんとか残せたことが、3店舗目のオープンやインバウンドという新たな客層の獲得、そして未来へとつながったのだ。

ジューサーバー
コロナ禍以前、京成高砂駅ナカで営業していたジューサーバー(写真:カフェ提供)

「コロナ禍、本当にしんどかったけど耐え抜きました。新大阪駅新幹線改札内の店は立地的になんとしても持っておきたかった店舗でしたし、京阪京橋駅構内店も、“京阪駅ナカの店”として愛されたチェーンですから、最低1店舗は残しておきたかったんです」と、岸本氏は苦しい思い出を噛み締めていた。

ジューサーバーの復活劇は、困難な時期を乗り越えるための教訓を示しているのではないだろうか。まず、核となる店舗を維持することの重要性。たとえ縮小を余儀なくされてもブランドの灯を消さないことが、将来の再成長のカギとなる。

次に、普遍的なビジネスモデルの価値。人件費を抑えつつ、高い利益率を維持できる仕組みが、厳しい経営環境下での生存を可能にしたのだ。さらに、立地や客層に合わせて柔軟に対応する姿勢も見逃せない。新大阪駅新幹線改札内の店でのインバウンド需要の取り込みや、遊園地への新規出店など、環境の変化に応じた戦略の転換が功を奏した。

いつの時代も、経営は危機に瀕することがある。そのとき、どの部分を守り、どこで変化を受け入れるか。「変わらないこと」と「変えること」のバランスを取りながら、粘り強く前進する。その姿勢こそが、ビジネスの持続可能性を高めるカギなのかもしれない。

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