オランダ・ハーグに本拠地を置くシンクタンク「国際テロリズム対策センター(ICCT)」が先月行ったシンポジウムでは、7人の専門家により、イスラエルとハマスの衝突による欧州への負の波及について議論が交わされた。興味深かった点は、衝突を機に、イラクなどの中東周辺国で過激化した反欧米主義の波が、西バルカンなどを経由して、欧州の先進国に達しつつあるということだ。
西バルカンはかつてのユーゴスラビア紛争の舞台でもあり、現在も多くのイスラム教徒が居住している。トルコなどを挟んでシリアに渡っていく欧州の玄関口でもあり、イスラエルとハマスの戦闘が激化する中、テロ活動や戦闘参加のため、若者のシリアへの流出が増加しているという。
また、偽情報やフェイクニュースが飛び交うことにより、イスラエルへのヘイトスピーチなどが増え、イスラム教系とそれ以外の住民の間での分断が生じていると指摘されていた。
背景として、いわゆるISやアルカイダが、イスラム教徒を迫害するイスラエルや同国を支援する欧米への攻撃を呼びかけているともいわれる。西バルカンからシリアへの若者流出は、かつて、2010年代に多くの欧州の若者がシリアにわたり、イスラム過激派の戦闘員として過激化した事象を思い起こさせる。
オランダの首都アムステルダム市の政策アドバイザーによれば、ハマスによるイスラエル襲撃の翌日、アムステルダム市の施設にイスラエル国旗を掲げようとしたところ、引きずりおろそうとする住民と、守ろうとする住民でトラブルが生じた。
反イスラム、反ユダヤの感情が膨らんで地域コミュニティ同士の衝突になりかねず、エスカレートを防ぐ必要があるという。
分断は欧州全体に及ぶ
こういった分断は、欧州全体に及んでいる。ハマスによる攻撃後の1カ月で、ユダヤ人への攻撃的行為やヘイトクライムは、フランスでは1500件(うち600人が逮捕)、イギリスでも、1000件以上が記録され、学校や子どもを狙う事件もあったとされる。
反対に、イスラム教徒へのヘイトクライムも増加し、例えばロンドンでは、同じく攻撃後1カ月間の事件数が230件と、前年同時期の約3倍に高まった。
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