福島第一原発の処理水の問題が、喉に刺さったトゲのように日中関係に残り続けている。先日韓国で行われた日中首脳会談で、李強首相は処理水の問題は全人類の健康に関する問題だと述べた。また、訪日した劉建超・中国共産党対外連絡部長は、処理水の問題を適切に解決し、日中関係の障害を取り除くよう日本側に求めた。
5月のプーチン・ロシア大統領の訪中では、中国は、ロシアとの共同声明を使って処理水の問題を取り上げて日本を批判した。
中国は、処理水を人権にも絡めている。昨年9月の国連人権理事会で、中国は、「日本政府が一方的に福島の原発で汚染された水を海洋排出することは、太平洋に面した国々および全世界の人々の健康権、発展権、環境権への著しい侵害だ」と批判した。
なぜ、中国は日本の処理水を人権侵害として批判したのだろうか。自国の人権状況について国際的な批判を受ける中国が、人権理事会の場で日本を批判した背景は何だろうか。
人権について積極的になった中国外交
長い間、人権は中国外交では取り扱いの難しい問題であり、中国外交で人権を自ら持ち出すことは少なかった。特に、欧米諸国との間では、1989年の天安門事件や、チベットや新疆における少数民族の扱いは、人権侵害として批判され、外交問題となってきた。中国は、人権は一国の国内問題だと主張し、欧米は人権を利用して内政干渉していると反発した。
中国外交が人権を積極的に取り上げることは少なく、国際機関などでも中国は人権については目立つことを避けてきたようなところがある。人権は、国際社会からの批判に対して自国を守るという防御的な問題だったと言える。
しかし、最近、中国外交は人権に関して積極的になっている。まず、各国との首脳往来の際に作成する共同声明などで、「人権を理由にした内政干渉に反対」や「人権の政治問題化に反対」といった中国の主張を書き込む例が増えてきている。
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