「実験に没頭」だけじゃない資生堂研究職のリアル 民間企業に所属する研究者に求められること

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資生堂の研究者である三浦の仕事は化粧品の原料や構成成分に由来する処方を決裁すること。このファンデーションの中身で世の中に製品を出したいという提案に対して、よいかどうかの判断をする役割を担っている。

研究者というと「研究室にこもって実験に没頭」というイメージを持つが、仕事場は研究室だけにとどまらない。

開発担当者として新商品の発表会に登壇した三浦(左)

密着した日の午前、三浦はオフィスに入り、メール確認や資料作成などデスクワークをこなした後、独自技術に関する戦略会議に参加した。研究者の立場から戦略やPRにも携わるためだ。4月2日のファンデ美容液の発表会に登壇したのもその一環だった。

「マーケターと同じ議論ができるようになることが、研究者としてのスタートラインとして大事。それがわからないと、言われるがままになってしまう。敵味方という話ではまったくなくて、共通言語で語り合えることがまず必要なんですよね」

と、三浦は語る。

目指す「サイエンティスト」とは?

昼食後は白衣に着替えて研究室に入り、研究員が開発しているファンデーションのチェックを始めた。ここからは研究者としての本領発揮だ。

「ファンデーションによって作り方はいろいろある。作り方によって粘度が変わったり、乳化型が変わったりするので、何を作りたいかに応じて、作り方を1品ごとに考えていく」(三浦)

研究室でできても、工場で同じものができるとは限らない。そのため、工場で量産するときの設備や状況などを想定した条件設定まで、三浦を始めとする研究チームで担っているという。

「本質的にはサイエンティスト(科学者)になりたい」と語る三浦にとって、仕事とは何か?

「長い人生の中で考えれば、そのゴールに向けての”手段の1つ”みたいなものかもしれない。ただ少なくとも、それをやっているときに関しては、誰かの心に残る製品を作ることであり、これを自分から提案していきたい。そう考えると、会社の中でのキャリアというより、社会に対して提供できた価値。本物のサイエンティストだったら、(重要なのは)そこだと思うんですよね」

(文中敬称略)

東洋経済の動画シリーズ「ドキュメンタリー 仕事図鑑」では、あらゆる現場の「働く人」に密着し、そのリアルな姿をリポートしています。
東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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