DV被害者を守る「シェルター」の厳しい実情 人命を守る活動に予算が十分に下りない

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(写真:ryanking999 / PIXTA)
日本では3日に1人、妻が夫によって殺されている――。これは警察統計によって明らかになっている事実です。前回記事では、DV被害者を加害者から隔離する民間のシェルター団体の取りまとめ役である近藤恵子さんに、日本におけるDVの実態について聞きました。この後編では被害者たちを実際に支えている民間シェルター運営の現状について取り上げます。
※前編記事:3日に1人妻が殺される!日本のDVの実態

 

――政府統計を見ているといろいろ驚くことがあります。たとえば強姦被害は、10代20代の若い女性に多いのですが、7割が誰にも相談していないのですね…

はい。性暴力犯罪の統計は、公式な統計を見ると減っていますね。これは、被害が減っているのではなく、被害者がどんどん「言えなくなっている」ことを意味します。なぜなら、私たちが連携している電話相談(よりそいホットライン:0120-279-338、被災3県からは0120-279-226)には、性暴力や性虐待に関連する相談が引きも切らないほどです。

現場で被害者の声に耳を傾けていると、いったい、この社会はどうなっているのだろうと思います。

福島県で深刻化する性暴力

――昨年、シェルターネットは、福島県で性暴力やDV被害者支援のための集中講座を手掛けました。

はい。先に触れた電話相談で統計を取ってみると、福島県では性暴力に関する相談件数が多くあります。

被害者支援の集中講座を受けてくださったのは、県警関係者、犯罪被害者支援にかかわる方々、男女共同参画にかかわる方、学校の先生、保健師さん、虐待された児童の支援にかかわる方々などです。皆さん、福島の被害実態が深刻であることを、データで知って驚かれていました。

――福島では対策のほうも進んできているようです。

SACRAふくしま(Sexual Assault Crisis Response Association:性暴力等被害救援協力機構)が頑張っていると思います。病院、被害者支援センターや県警が協力して対処しています。電話(024-533-3940)をすると、ふくしま被害者支援センターの女性支援員が対応し、できるかぎり、病院や警察にも付き添います(詳細はこちら)。

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