リチウム相場の下落に歯止めがかからない主因は、車載電池の需要の伸びを上回る供給過剰にある。
証券大手の中信建投証券の試算によれば、2024年のリチウム原料の供給量は炭酸リチウム換算(LCE)で41万トンに達するのに対し、需要は19万2500トンにとどまる見込みだ。この予想が的中すれば、供給と需要に20万トンを超えるギャップが生じることになる。
「2023年は蓄電システム向け電池の需要が急拡大したことが、(EV向けの需要拡大の鈍化を補う形で)年央までのリチウム相場の下支えになった。とはいえ、蓄電システム向けの市場規模はEV向けとは比べものにならないほど小さく、下支え効果は長続きしなかった」
財新記者の取材に応じた業界関係者は、2023年のリチウム相場の動きをそう総括した。
先行きは悲観ムード一色
「リチウム原料の需要回復の時期について、業界内では明確な見通しを立てられなくなっている。中国国内の自動車市場は、例年1~3月期はオフシーズンにあたる。海外市場でも(中国市場のような)EV普及率の急上昇は見られない」。前出の関係者は、そうため息をつく。
業界の悲観ムードに追い打ちをかけたのが、アメリカ政府が12月4日に発表した「懸念される外国の事業体」に関する規制案だ。同案は、中国資本が25%以上を出資する企業が生産した電池または電池部材を組み込んだEVについて、税額控除の対象から外す方針を示した。
中国のEVメーカーの進出が相次いでいるヨーロッパ市場でも、EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会が、中国製EVへの(中国政府の)補助金に関する調査を開始した。
こうした悪条件が重なり、業界関係者の間には(リチウム原料の)需要の本格回復は短期的には期待できないという見方が広がっている。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は12月5日
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