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政治・経済・投資 #今なぜ「年収の壁」

「専業主婦の年金3号はお得だ」って誰が言った?

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適用拡大が進んで、それまで3号だった人たちに厚生年金が適用されるようになると、彼らに2号の選択肢が出てくる。ここで研究者をはじめとして多くの人たちが勘違いしていることは、2号と3号の選択肢があるときに、3号を選択するほうが得だと考えていることだ。

3号より2号のほうが安定した幸せな生活に

もし、3号を選択したほうが得だというのであれば、先に話した、「被用者保険に入ったほうがみんな幸せな人生を送ることができる」という話と矛盾するのだが、そんなことはない。2号と3号の選択肢があれば、2号を選択したほうが間違いなく社会保険に守られた安定した人生につながる。

──しかし、世の中の人たちはそうではないと信じてしまっていると。

日本の社会保険制度の下では、今も昔も、夫婦共働きのほうが、現役期も、老後の生活も確実に安定するように設計されている。でも、昔は、女性の労働市場が未成熟で、保育や介護制度も未整備だったから片働きの人が大勢いたし、それは公共政策の責任でもあった。だから、片働き世帯が貧困に陥らないように、その世帯も包摂する制度として第3号被保険者制度を設けていただけだ。

権丈善一(けんじょう・よしかず)/慶応義塾大学商学部教授。1962年生まれ。2002年から現職。社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議委員、社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。著書に『再分配政策の政治経済学』シリーズ(1~7)、『ちょっと気になる社会保障 増補版』、『ちょっと気になる政策思想』、『もっと気になる社会保障』など(撮影:今井康一)

2号になれば、2階部分の所得比例年金が上乗せされて将来の年金給付が増えるということだけではない。労働市場に参加し続けて経済的に自立することは自分の人生を享受し、その人生を守るうえで重要だし、そのほうがより充実した社会保障を受けられるように制度は設計されている。

たしかに第3号被保険者制度がある年金制度は、昔の家族を想定していたとは言える。でもそれは、「片働きだ」「共働きだ」という世帯類型の話ではなく、古い家族として、結婚の安定性を前提としたという意味でだ。

今の時代、いつなんどき離婚するかもしれず、いつなんどき配偶者が鬱になって一家の大黒柱の役割を果たせなくなるかもしれない。結婚関係が安定していた古い家族の時代には遺族年金という死別リスクに対応する制度を準備しておけばよかったが、新しい家族は死別リスク以外のさまざまなリスクを抱えている。そうした時代には、第3号被保険者制度の利用は、将来、貧困に陥るリスクが高すぎる。

今の若い人たちに、「第3号被保険者になりたい?」と聞くと、「いや、利用しません」と返ってくる。もちろん、そうした質問への答えは、各人の市場価値に関する自己評価に依存するのだと思う。でも今の時代、3号を希望する若い女性たちは、専業主婦を扶養することができる男性と出会うのは難しいのではないだろうか。

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