MBAと中小企業診断士、リスキリングならどっちか 難易度、費用、評価、役立ち度などを徹底比較

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Q.転職や社内の人事評価で企業の人事部門から高く評価されるのはどちらですか?

業種にもよりますが、両方ともあまり高く評価されていません。しいて言えば診断士です。外資系企業、とくに外資系コンサルティングファーム(ガイコン)はMBAを重視しています。ただし、ここで言うMBAとは海外のトップ校のことで、国内MBAはあまり評価していません。

金融機関、とくに地域金融機関は、診断士を重視しています。地域金融機関は、職員に診断士を取得させ、リレーションシップバンキングを推進するよう、金融庁から強力に指導されているからです。

なお、ガイコンに就職・転職するためにコンサルタントの資格である診断士の取得を目指す人がいるようですが、これは無駄です。ガイコンのコンサルティングと診断士の経営診断は別物で、ガイコンは診断士をまったく重視していません。

それ以外の業種では、MBA・診断士の取得を昇格のポイントに指定している企業があるものの、全体的には人事部門担当者は「しっかり勉強していますね」という程度で、両方とも正式な評価の対象にはしていません。

正式な評価とは別に、認識としては、人事部門担当者は、多くのMBAが実質「全入」という実態を知っており、「診断士の方がハイレベル」と捉えています。

Q.学習して楽しいのはどちらですか?

断然MBAです。診断士は面白くありません。MBAは、ケースのディスカッションやグループワークで学ぶので、講師や他の学生からいろいろな視点が得られて、知的興奮を味わえます。飲み会などイベントも多く、充実したキャンパスライフを楽しめます。コロナ環境下では多くの授業がオンラインになりましたが、かなり対面に戻っています。

一方、診断士の受験勉強は、基本は机に向かってテキストを読むだけ、予備校の授業も一方通行で、面白くありません。「継続は力なり」と言われる通り、継続的に学ぶと学習効果が高まります。継続するためには楽しく学ぶことがカギで、この点では断然MBAに軍配が上がります。

余談ですが、MBAでは学生同士あるいは師弟間の恋愛・不倫は日常茶飯事で、さらに結婚・離婚に発展するケースも多々あります。知的なパートナーを見つけたいという人にとって、MBAはお勧めです。

Q.そもそもMBAや診断士を取る必要、取る価値ってあるんですか?

必要はまったくありません。しかし、「人生を変えるパスポート」として取得する価値があります。ともに学習内容自体は、ビジネス書を読めば学べることです。純粋に学習が目的というなら、多大なお金と時間をかけて取得する必要はありません。孫正義や稲盛和夫といった日本を代表する起業家は、MBAも診断士も取っていません(豊田章男のように創業家ジュニアにはMBAホルダーが多数います)。

しかし、MBAや診断士を取って活動すると、いろいろな経験をし、新しい情報・知識を得ることができます。その過程で、いろいろな新しい人と出会い、新しい考えに触れます。刺激と成長のあるビジネスライフを送りたい、自分の能力を伸ばし、フルに発揮して世の中に貢献したい、と考えている人にとって、MBAや診断士は「人生を変えるパスポート」になるでしょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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