「グーグル解体」米司法省の真の思惑を読み解く AI新時代に向けた競争環境整備が狙いか?

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その背景には検索サービスそのものの寡占がある。Statistaが収集しているデータによると2022年12月末の検索シェアでグーグルは84.08%。この数字はかつての90%には及ばないものの極めて安定している。ライバルはマイクロソフトのBingだが、シェアは8.95%とその差は極めて大きい。

加えてグーグルは検索サービスを基礎に、各種サービスへの動線を引くことで市場を支配してきた過去がある。

支配的なネット検索結果から流入先を選別?

多くの読者にとって最も身近な例は旅行手配だ。

グーグルが航空運賃の検索比較サービスの草分けだったアメリカ・ITA買収を発表したのは2010年のことだ。背景としてはマイクロソフトがITAのライバルであるアメリカ・カヤックと提携し、旅行手配検索の利便性で利用者を伸ばしていた時期と重なる。同じくマイクロソフトからスピンアウトした旅行手配サービスのエクスペディアとの連携も滑らかで、グーグルは「旅行手配」という限られたジャンルではあったが劣勢に回っていた。

このとき、検索市場の支配者が特定の航空チケット手配サービスを傘下に収めることで、旅行手配サービスのイノベーションが遅れると競合からクレームがついたが、最終的には2011年4月に条件付きで司法省が買収を承認している。

しかし、その後起きているのは航空チケットの手配だけではなく、ホテル手配やワンストップでの旅行に関する各種サービス、あるいは旅行先でのレストラン予約など、さまざまな場面、粒度においてのグーグル支配ではないだろうか。

旅行にまつわるさまざまなオンラインサービスを提供する事業者(OTA)が、グーグルの検索から排除されているわけではない。しかしオープンに参加できるとはいえ、グーグルの検索結果上位にはグーグルに広告を入れる業者のリンクが並び、またグーグルが独自に検索した結果を一覧性よく並べ、結果的に自社サービスあるいは自社とのつながりが深い事業者が目立ち、ライバルの検索結果が深いところに沈む。

結果として、業界全体の取引数動向に比べてグーグル検索からの流入が減少し続けているという声がライバルから上がっており、司法省もそれらの数字を証拠として出してくると予想される。

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