専門医「コロナ5類移行の"開放感"が最も怖い」 「コロナ診療はどう変わるのか」など、徹底解説

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──弊害を防ぐにはどうしたらいいですか。

岡:岸田首相も「段階的な移行を検討する」と言っていますが、“ワクチンを打ち、罹患したときは速やかに病院で診療を受けられ、いざというときは入院治療が受けられる”という体制を保つためには、医療費、ワクチン接種の補助や空床確保費を一気にやめるのではなく、できるだけソフトランディングさせることが重要です。

また、患者を受け入れられないという内科や小児科などに対しては、発熱をしっかり診る医療機関は診療報酬が有利になるようにしたり、感染対策をサポートしたりしたうえで、発熱患者に対応するよう政府から求めてほしい。

無症状でも感染力があるコロナでは、積極的に受け入れれば受け入れるほど、院内感染をゼロにすることは困難です。感染対策を取っていながら院内感染が起きてしまった場合、医療機関に責任を問うことはしないと政府が明言することも必要です。そうすれば少しずつ受け入れる医療機関が増えて、混乱や被害を少なくすることができると思います。

──それでも5類にするメリットは何でしょう。

岡:“気分”ですね。開放感。長いコロナ禍が終わった、と。でも、その開放感や安心感が過剰にとらえられてしまうと、とても危険です。感染しても会社に行っていいんだ、学校に行っていいんだ、マスクもしなくていいんだ、となれば、コロナはあっという間に広がります。

5類になっても気をつけることとは

──我々国民が気をつけることは?

岡:まずはワクチンを打ってください。とくにオミクロン対応のワクチン1回を含めて最低3回は打ってほしいです。そうすれば、確実に重症化リスクが下がり、重症者が増えないので医療逼迫も防げます。

今、重症化して入院する人を見ると、その半数は未接種か接種3回未満です。シンガポールは新型コロナ感染者の治療費を公費負担していますが、2021年12月からはワクチン未接種者が新型コロナに感染して治療を受けた場合、自己負担としています。そのくらいワクチンは重症化を防ぐ効果があります。シンガポールほど強い措置は難しいかもしれませんが、アレルギーなどのために接種できない人以外には、接種率を上げる取り組みが大切です。

マスクは、今までのようにどこでもずっと付けている必要はないですが、感染状況によっては人混みの中や、家庭内でも感染症状がある人がいる中では付けたほうがいいでしょう。

5類になるということは自己責任になるということですから、政府が「マスクを付けなくてもいい」と言っても、どういうときにマスクを付けるべきなのか、自分で考えられるようにならなければいけません。

5類になっても、今後、新型コロナの感染者は増えたり減ったりを繰り返すでしょう。新たな変異株が出現する可能性もあります。これまで以上に個々人の感染対策が求められます。

埼玉医科大学総合医療センター 岡秀昭教授
2000年日本大学医学部卒。日本大学第一内科(現血液膠原病内科)にて初期研修し感染症診断治療の重要性を認識する。横浜市立大学院で博士号取得後、神戸大学病院感染症内科、東京高輪病院感染症内科部長などを経て2017年埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科に着任、2020年7月より現職。9月より病院長補佐として感染症診療の指揮をとる。感染症患者を現場で診察する臨床感染症の第一人者。著書「感染症プラチナマニュアル」、「感染予防、そしてコントロールのマニュアル」(メディカル・サイエンス・インターナショナル)ほか多数。
井上 志津 ライター

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いのうえ しづ / Shizu Inoue

東京都生まれ。国際基督教大卒。1992年から2020年まで毎日新聞記者。現在、夕刊フジ、週刊エコノミストなどに執筆。福祉送迎バスの添乗員も務める。WOWOWシナリオ大賞優秀賞受賞。著書に『仕事もしたい 赤ちゃんもほしい 新聞記者の出産と育児の日記』(草思社)。

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