「ホワイトなのに若手が辞める」企業の残念な盲点 向上心が高い若者たちを育てる技術の本質

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上司や中堅社員に対するアンケートを見ると、「怒るとパワハラと言われるから怒れなくなった」「叱ると辞めてしまう」などの事情があるようです。その結果として「優しくしたのに部下が辞めてしまう」のだとか。

でもこれって、若者や職場環境の改善のせい……というよりは、今までにあった問題に向き合ってこなかったから、ツケが回ってきたのだと思います。若者の「転職」は確かに昔より増えましたが、若者だって働き続けて安定や成長が見込めるならむやみに辞めたりはしません。それに、多少厳しくても充実した仕事を求めてゆるい職場を辞めるということは、やる気がないわけではないんです。むしろ向上心はかなり高いと思います。

人を育てる方法を模索してこなかったのが原因

本来は仕事にパワハラやいきすぎた指導は必要ありません。私は独立するまで16年会社員を続けましたが、なかなか退職に踏み切れなかったのは職場環境がよかったこともあります。上司に尊敬できる人が多く、あまり怒ったり怒鳴ったり頭ごなしに命令された記憶がありません。たくさんのことを教えてくれたし、経験を積ませてくれました。

若者も自分に有益だと感じ、成長できると思う上司や職場であれば、簡単に離れようとは考えないはずです。職場環境にメスが入る以前から部下を育てるのがうまかった人たちは、今でもそんなに変化を感じていないのではないでしょうか。

逆に「優しくしたのに部下が辞めてしまう」と頭を抱えている人たちは、昔は「厳しくしないと部下が育たない」と、怒ったり叱ったりする以外の方法で、人を育てる方法を模索してこなかったのではないでしょうか。

何をしても甘やかされ、まともな指導も仕事も与えられなければ、やり直しが効く年齢の内に転職したいと思うのは当然です。離職の原因は職場環境の改善や若者にだけにあるわけではありません。人を育てるための技術や工夫が、上司にも求められているのだと思います。

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