ダメ男「太宰治」ずば抜けて身勝手なのにモテた訳 間抜けなことをするけど、放っておけない魅力

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多くの名作を残した太宰治。その人物像に迫ります(写真:内蔵助/PIXTA)
『走れメロス』『斜陽』『人間失格』など数多くの名作を世に送り出した文豪・太宰治ですが、その私生活は「ダメ男のチャンピオンとして文壇に君臨した」と指摘するのが、翻訳家のイザベラ・ディオニシオ氏です。
東洋経済オンラインで『イタリア女子がはまった 日本人が知らない古典の読み方』を連載するイザベラ氏が解説します。
※本稿は『女を書けない文豪たち イタリア人が偏愛する日本近現代文学』を一部抜粋・再構成したものです。

「文学・ミーツ・日常」の1つ、鎌倉文学館

好きなドラマや映画の舞台となっている場所に足を運んで、散策してみるのはなんて楽しいことか。

目の前に広がる景色を眺めていると、作品を観たときの感動がそのまま蘇り、一瞬にして夢の世界へと誘われる。よく知られている観光スポットであれ、個性的な街であれ、そこを歩くだけでも誰だって主人公気分を味わえるのだ。

映像よりもう少し妄想力が必要になってくるけれど、文学作品の舞台となった土地めぐりもワクワク感満載だ。田山花袋の『蒲団』に出てくるド変態男、竹中時雄が歩く小石川の切支丹坂、谷崎潤一郎の『痴人の愛』に登場する風変わりな夫婦、ナオミと譲治が通い詰めていた慶應大学裏のダンス教室、幸田文の代表作、『流れる』のなかで描写されている柳橋の芸者置屋とそこで働く女たちの姿……。東京のどの街も文学にあふれている。

しかも、数々の想像上の人物ばかりではなく、その生みの親である文豪たちの生活の痕跡もあちらこちらにちりばめられているので、文学オタクにはとにかくたまらない。自分が今いるこの場所に、あの偉大な文学者がかつていたかと思うと、感激のあまり頭がクラクラしてしまうもの。

芥川龍之介の背中を追いかけて田端を歩いたり、上野精養軒でステーキを召し上がる森鴎外の横顔を思い浮かべながらコーヒーを啜ったり、西馬込の自宅で原稿をしたためる三島由紀夫の様子を想像しつつぶらぶらしたりすると、空想が次々と膨らむ。「文学・ミーツ・日常」が実現されるこうした場所はいくらでも挙げられるが、東京から少し足を延ばしたところにある鎌倉文学館もその1つだ。

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