予算をめぐる米政界の対立は実に醜悪なものとなっている。経済のダイナミズムと国際基軸通貨ドルの地位という、米国が戦略上有する最大の優位性が損なわれかねない事態となっている。
目下、政争の具である債務上限問題は、10年近く前のものよりも危険だ。理由は2つある。1つは、政治の分断が深まったこと。政治的な目先の勝ち負けが優先されるようになったことで、政策が自傷的なものとなる可能性が高まっている。もう1つは、暗号資産(仮想通貨)の台頭だ。これにより、国際金融でドルに代わる選択肢が現れるおそれが浮上するようになった。
現時点でドルの支配力は圧倒的だ。クロスボーダー決済(主に企業間決済)は年間およそ150兆ドルに達し、それらは通常、米国の銀行と密接な国際決済システムを通じて処理されている。こうした通貨体制は、資金調達や国際的な影響力などの面で米国に数々の優位性をもたらしており、日本を含む同盟国もさまざまな意味で恩恵にあずかっている。米国債がデフォルト(債務不履行)すれば、同盟国のメリットもしぼみ、世界経済に打撃が広がる。
米経済が「人質」に
米政界は今、2013年以来で最悪の膠着状態にある。当時は共和党が債務上限引き上げの交換条件として民主党オバマ政権に医療保険改革法(オバマケア)の修正を要求。こうした与野党対立から米国債のデフォルトが迫り短期金利が上昇、5億ドルの追加利払い負担のツケが納税者に回される結果となった。このとき米国債は「トリプルA」の格付けを失いかけている。債務上限をめぐる今回の対立が長引けば、最大で600万人の雇用が犠牲となり、米国の家計資産から15兆ドルが失われる可能性があるといった試算も出ている。
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