原油価格を代表とする幅広い分野で物価上昇率の上振れ傾向が続いている。それがコロナショック後の世界経済の回復に、大きく水を差す可能性が高まってきた。来年にかけての世界経済は、物価上昇率の上振れと景気減速とが共存する「スタグフレーション」の様相を一時的に強めるだろう。
物価上昇率の上振れはさまざまな要因が重なって生じたものだが、根幹には、新型コロナウイルス感染症の流行を受けた個人の消費行動の変化があるだろう。例えば、個人は感染リスクを警戒して外食、旅行、教養・娯楽サービスなど対人接触型サービスへの消費を減らす一方、巣ごもり消費の傾向を強めて、家での食事を増やし、家具、家電、日用品、ネットショッピングなどへの支出を増やしている。
コロナ禍の下で新たに需要が高まった業種では供給が追いつかず、需給逼迫から価格が上昇する。モノをつくる製造業での生産活動の拡大は、原材料や電力への需要を高め、足元での商品市況上昇、とくに原油などエネルギー関連の価格高騰をもたらしている面がある。
さらに、感染リスクへの警戒から運転手など物流に携わる労働力の確保が難しく、それが供給制約となって人件費が上昇している。人件費上昇が物流コストを高め、それがまた、エネルギー関連を含めて多くの製品に価格転嫁されているのが現状だ。
新たな均衡への移行期
世界で進む物価上昇率の上振れは、新型コロナウイルス問題をきっかけに生じた個人の消費行動の変化と、それが引き起こす産業構造の変化の移行期に生じる、いわば「生みの苦しみ」なのではないか。
価格上昇や賃金上昇によって、企業の生産活動や労働力は新たに消費が増える産業へと移っていき、それが需給の逼迫傾向を徐々に解消していく。いわゆる価格メカニズムが働いて、いずれは需給が一致することになるのである。その結果、資源価格の高騰、物価・賃金上昇率の上振れ傾向も徐々に解消されていき、産業構造と価格体系は新たな均衡に至るだろう。
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