[Profile] Peter Scott-Morgan 英インペリアル・カレッジで博士号取得(ロボット工学)。アーサー・D・リトルで企業変革マネジメントに従事。その後、独立。2007年、40代で商業的な仕事から引退。以後、世界中を旅する。17年、ALSと診断され余命2年の宣告を受ける。
余計なお世話かもしれないが、本書を読み終えて、あることが心配になった。このままではSFというジャンルが消滅してしまうのではないか、ということだ。
かつてはSF映画の脚本めいたことを思い付いたとしても、それをフィクションとして記述するに留(とど)まったはずだ。しかし今や、あらゆることが現実に実装できる世の中になりつつある。どんな突飛なアイデアも、実装されてしまえば、ノンフィクション。現実がフィクションを凌駕することもあるのだ。
本書は、愛のため科学の力で世の中のルールをぶっ壊した男の物語である。具体的には、難病と診断され余命を宣告されたロボット科学者が、制約から解き放たれるため自らの肉体を実験台にサイボーグとして生きることを決意し、その記録を綴(つづ)った一冊だ。
英国のロボット科学者ピーターの人生は、右足が思うように動かないという些細(ささい)な出来事を起点に一変する。MRI、胸部X線検査、血液検査、そして遺伝子検査。膨大な数の検査を受けるもののすべて陰性で、原因がわからない。だがやがて、上位運動ニューロンの脱神経に加え、下位運動ニューロンにも3カ所以上の脱神経が認められ、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断される。
同じ事態に直面すれば、未来に絶望してしまう人も多いだろう。しかし、それをどう感じどう対応するかは本人次第なのだ。ピーターは、死ぬことも、生ける屍(しかばね)のような形で延命することも拒否した。それどころか、五感を無数の電子部品によって増幅し、自身を進化させようと企んだのだ。目的はあくまでも、ALSを宣告されなかった場合よりも長く、楽しく生きること。
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