金融市場が大きく混乱した3月には、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策の重点は、金融市場と金融システムの安定維持にあった。CP(コマーシャルペーパー)や投機的格付けのものも含めた社債を直接買い入れる一方、財務省証券を無制限で買い入れることを決めたのはそのためである。
FRBの政策は今や、政府と協調した形での経済危機への対応、とりわけ中小企業と雇用の支援へとその重点が移っている。FRBは6月8日に、中小企業の資金繰りを助けるため、中小企業向けに銀行が融資した債権を買い取る「メインストリート融資制度(MSLP)」の拡充策を発表し、制度の運用を始めた。
2008年のリーマンショックの際には、政府とFRBは銀行の救済に動いた。いわゆるウォールストリート救済である。このときは、巨額の投資で自ら金融危機を招いた銀行を、公的資金を用いて救済したことに、国民から強い批判が噴出した。
ところが、中小企業と雇用を救済するという現在の枠組みは、国民から称賛されることはあっても批判されることはない。こうした一種、居心地のよい政策をしばらく続けたいと、FRBは考えているだろう。
しかし、経済環境が徐々に安定を取り戻し、中小企業と雇用の支援も一巡していけば、FRBはいずれ物価の安定と雇用の拡大という2つの責務(デュアルマンデート)の達成を図るという平時の金融政策運営に戻らなくてはならない。その中で、新たな金融緩和手段の導入も検討されていくだろう。
FRBはマイナス金利政策の導入には否定的であり、今後も政策手段の選択肢には入ってこないだろう。そうした中、短期金利ではなく長期金利の低下、イールドカーブのフラット化を通じた、追加的な景気刺激策を模索していく可能性がある。
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