5月下旬から6月上旬にかけての世界的な株価上昇局面は、「コロナバブル」などと呼ばれている。
新型コロナウイルスの感染拡大第2波のリスクが懸念される中で、3月下旬からのわずか2カ月ほどで米S&P500指数が40%も上昇したのは、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする各国中央銀行による過剰な金融緩和が要因だとの指摘も多い。
しかし、現在の株価の動きには、より本質的な点で懸念すべき別の要素がある。それは、現在始まりつつある景気の反発や株価の急反発を促しているドライバーが、はたして何なのかということに関連する。
今、米国において注目すべきマクロ経済データがある。「23%増」。未曾有の景気後退が起こっている米国で異様ともいえるこの数値は、5月のマネーサプライ(M2)の前年比伸び率である。日本でも5月のマネーサプライ(M2)は同5%強伸びており、実質的に1990年代後半以来の伸びとなっている。
マネーサプライは主に民間と政府の信用供与の状況、すなわち債務の拡大・収縮によって増減する。リーマン危機の際には、米国では銀行の信用供与(貸し出し、社債投資などの残高)の伸びがマイナスになるいわゆる「信用収縮」が起き、それを政府の信用拡大すなわち「財政拡大」が補う形で、マネーサプライの伸びを維持した。しかし、今回は民間の信用収縮は起きておらず、むしろ3月末時点で銀行の信用供与額は前年比約9%の「プラス」である。その一方で膨大な「財政拡大」によるマネー供給が行われている結果、マネーサプライが23%増という異様な伸びを見せているのである。
中央銀行がマネーサプライに影響を及ぼしうるのは、民間の信用供与を通じてである。今回は金融機関が企業や家計への信用供与能力を維持しており、中央銀行の金融緩和はそれゆえに大きな効果を生んでいるともいえる。逆に、マネー供給の観点からは、民間信用が増勢を維持している中でこれほどの財政拡大は必要だったのか、疑問である。「財政マネーの過剰供給」の結果、金融市場で株価急騰などの事象が起きているのだとすると、これは「財政バブル」といってよい状況なのではないか。
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