社内外の会議の多くがリモートになり、それへの肯定と否定の両意見を耳にする。肯定派は「必要のない出張や移動が多すぎた。将来もリモート会議だけでよい」、否定派は「リモート会議では真意が伝わらないので不満が残る」と言う。どちらも正論だ。
リモート会議に消極的だった日本企業は、まずはこれを機会にもっと活用すべきだろう。一方で、その限界も正しく理解したほうがよい。とくに対面会議によるすり合わせが、日本企業の強みの源泉だったことは留意しておきたい。
経営学では、製造企業と部品などを調達する協力企業との地理的な距離の近さや、組織の壁を越えて同じ敷地内で働く「コロケーション」の活用を日本のものづくりにおける優位点に挙げてきた。
例えば、トヨタの部品企業の多くは愛知県内に位置し、ゲストエンジニア制度で、1000人を超える技術者がトヨタの敷地内で協業してきた。自動車の開発・製造に関わる人たちがいつでも対面会議ができる環境だ。これが、日本のすり合わせを促進した。
米国のダフト教授らが1980年代に提唱した「メディアリッチネス理論」という学説がある。解決したい問題によって、それに適した能力(リッチネス)を持ったメディアを選ぶ必要があると指摘した。具体的には、解決する問題が明確であれば、多くの情報交換が必要な場合でもメールや電話でよい。一方で、問題自体がまだ曖昧で人によって解釈が異なる段階では、対面会議が必要だとした。
80年代の理論なのでリモート会議は扱わず、能力が低いほうからレター、メール、電話と続き、最も高いのが対面の想定だった。しかし、現在は、リモート会議か対面会議かの違いが重要だ。
この記事は有料会員限定です
残り 717文字
