[Profile] Markus Gabriel 1980年生まれ。史上最年少の29歳で、200年以上の伝統を誇る独ボン大学の哲学科・正教授に。西洋哲学の伝統に根差しつつ、「新しい実在論」を提唱して世界的に注目される。NHK Eテレ「欲望の時代の哲学」などへの出演も話題に。
現代社会において、ポストモダニズムからポストトゥルース(ポスト真実)が広がり、それがトランプ米大統領誕生やブレグジットに見られるポピュリズムの台頭につながっている。哲学界の若き天才マルクス・ガブリエルの「新実在論」は、こうした閉塞感を打ち破る、新しい哲学である。
新実在論の新しさは、現実は物理的な対象だけではなく、それに関する見方、心情、信念、思想、空想といった、あらゆる意味の場に現れるとする、存在の複数性、同時性、同等性にある。
これが、新実在論の第1の特徴である「世界は存在しない」、すなわち、あらゆる物事を包摂するような「単一の現実」は存在しないということの、存在論的な意味である。
その上で、「私たちは現実をそのまま知ることができる」、すなわち、われわれ自身が現実の一部であることから、本質的に知ることができない現実はないという認識論的立場が、第2の特徴である。
ガブリエルは、すべての真実が相対化され、もはや宗教はおろか自然科学上の真実さえも絶対ではなくなってしまった現代の精神的危機を、「世界史の針が巻き戻る」という言葉で表現している。
神が死に、近代という壮大な物語も失われ、「古き良き十九世紀の国民国家の時代に戻ろうとする力」が勢いを増してきているというのである。
ガブリエルは、自然科学の持つ客観性の重要さを強調しつつ、その単一の物差しによって人間が下位概念におとしめられてしまうことも拒んでいる。
そして、異なる文化においても普遍的な道徳的価値観や倫理観は存在するのであり、そこにはわれわれが同じ種の動物だという生物学的な根拠があるのだという。つまり、人間第一主義の立場から、人間にとっての普遍的価値や人間性の重要性を繰り返し強調しているのである。
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