政府主導の「産業政策」は、市場経済を重視してきた米国の保守派にとって嫌悪の対象であった。1970〜80年代、政府の産業政策に導かれた日本経済に激しく追い上げられた末、自由放任の米国経済が結局は勝利したという「神話」に支えられ、ロナルド・レーガン政権以降はとくに嫌悪が強まった。
その保守派の内部で、産業政策を今こそ導入すべきだという論議がにわかに高まり論争となっている。背景は中国との新冷戦だが、深い思想闘争も垣間見える。ドナルド・トランプ時代に影響力を伸ばしている新興保守勢力が産業政策導入を呼びかける一方、従来の保守勢力がそれを批判する構図だ。
論争の中心にいる1人は改革派保守(リフォーモコン)と呼ばれる集団の旗手、マルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州)だ。ルビオは2016年の大統領選挙の事前下馬評で、共和党の最有力候補とみられた時もあった。トランプの後釜をにらんで、産業政策を主張の中心に据える構えだ。
ルビオが産業政策導入をぶち上げたのは、昨年末に米国国防大学で行った演説だ。国家安全保障まで脅かす中国との経済競争を勝ち抜くには、「第2次世界大戦期や冷戦期のソ連との宇宙開発競争時代のように『官民協力』が必要だ。市場原理主義では勝てない。官民協力により対中競争の中核として製造業を再興し、失われた『労働の尊厳』も取り戻す」と主張した。
ルビオの演説と並行して、トランプ時代の新たな保守思想形成を目指して生まれた季刊論壇誌『アメリカン・アフェアーズ』冬季号が、「米国には産業政策が必要だ」という巻頭論文を掲載した。筆者は保守系シンクタンク、ハドソン研究所のアーサー・ハーマン上級研究員。保守系クレアモント研究所も、ルビオ演説に呼応して多くの論客による産業政策肯定論を展開した。
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