中国では2020年1月1日に「暗号法」が施行された。その背景には中国人民銀行が発行主体となるデジタル通貨/電子決済(DCEP、いわゆるデジタル人民元)の発行に向けた法整備を進める狙いがあるとみられる。デジタル人民元については19年6月に米フェイスブックが暗号通貨リブラに関する計画を発表したのを機に開発が加速されたとみられ、米中のハイテク覇権争い、という観点からも注目が集まっている。
デジタル通貨にはさまざまな形態のものがあるが、ここでは、中央銀行の負債のうち、紙幣などの現金通貨を代替し、企業や家計を含め、広範囲で使用されるものを想定しておこう。このようなデジタル通貨には、利用者が中央銀行に直接口座を保有し、それらの口座間の決済に使用を限定する「口座型」と、中央銀行の口座を経由することなく利用者同士の直接の受け渡しを可能とする、「トークン型」がある。デジタル人民元は人民銀行に口座を持つ銀行などを対象に発行され、利用者はあくまでそれら金融機関の口座を通じて決済を直接行う、「トークン型」の通貨になるようだ。
さて、デジタル通貨はそのコピーが容易であることから、いかにして二重使用などの不正取引を防ぐのか、ということが実用化に当たっての最大の問題となっている。とくに「トークン型」では、決済が中央銀行のシステムで集中的に処理されるわけではないため、不正防止にどのような技術が用いられるのかが焦点となる。
これまでの暗号通貨で用いられてきたブロックチェーン(分散台帳技術)は、取引を記録する「台帳」として誰でも参加可能なパブリック型と、参加者が制限されたパーミッションド型とに分けられる。ビットコインなどに用いられている前者は、デジタル通貨を用いた決済の承認の際にコストが膨大な計算を課すことで不正使用を防ぐ技術を用いており、このため取引に大きな時間とエネルギーがかかってしまう。また、台帳管理の仕様変更によって発行主体がしばしば「分裂」してしまうリスクもある。
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