[Profile] かわだ・としあき/『麺ジャラスK』店主/プロレスラー。1963年生まれ。栃木県出身。82年、全日本プロレスに入団。94年、第12代三冠ヘビー級王者。2010年、ラーメンと鶏の唐揚げを看板料理として、自身のニックネームにちなんだ『麺ジャラスK』を開店。
2019年のビジネス本で一番の奇書といっても過言ではないだろう。タイトルの長さに目を奪われるが、内容も語り口こそ熱いながら読み手のモチベーションは上がるどころか下がりかねない。「俺がラーメン屋を始める前にこの本を読んでいたら、絶対にラーメン屋だけはやらなかったよ!」と胸を張られても。失敗談から学び、起業を後押しするビジネス本は少なくないが、失敗から学んで起業のハードルを上げてしまうビジネス本は珍しい。
著者の川田利明は平成を代表するプロレスラー。全日本プロレス(全日)に長く所属し、三沢光晴などと1990年代のプロレスブームを支えた。深夜のプロレス中継を見て三沢のエルボーと川田のキックの応酬に心をわしづかみにされた若者も多いはずだ。
その川田が10年に引退宣言もせずに都内でラーメン屋を開いた。リング上での寡黙な職人肌のイメージから、客商売で堅実に成功したのではと思って本書を読むと、すべてが常識外れで腰を抜かす。
「ラーメンを食わせたいという情熱だけで起業してはいけない!」と熱く説くが、本人がラーメン屋を開いた理由は「借りた物件が、もともとラーメン屋だったから」。飲食店を出すことは決めていたが、物件がもともと串揚げ屋だったら串揚げ屋、焼き鳥屋だったら焼き鳥屋だったとか。確かに居抜きならば初期投資を抑えられるが、契約して厨房にいざ入ったら「なんにもねーじゃん!」と嘆く。駅から遠く、無駄に広いので家賃は高く、居抜きなのに設備はない。下見していないのかよと誰もが思うが、そこが川田流か。「逆説ビジネス学」のタイトルどおり、反面教師の教えがこれでもかと続く。
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