アップルの新商品が出ると、発売日に購入し、パッケージを開封する様子をブログや動画で公開する人たちがいる。これは「開封の儀」と呼ばれる。ファンにとって、開封はある種の儀式なのだ。同社のWWDC(ワールド・ワイド・デペロッパーズ・カンファレンス)でのCEO(最高経営責任者)や幹部の基調講演では、数々の新商品がお披露目されてきた。「最後にもう1つ」とサプライズ発表をする定番の演出は有名だ。このイベントも、非常に儀式じみている。
アップルやスターバックス、ハーレーダビッドソンなどのブランドは、ファンにとって特別な意味を持っている。休日にスターバックスでラテを飲みながら読書をするのが私の人生だ、と言い切る人もいる。彼らにはスターバックスは人生の一部なのだ。このような「特別な意味を持つ消費」を、アメリカ人の学者ラッセル・ベルクらが考案した、神聖な(Sacred)消費という概念と関連付けて考えてみたい。対照的に、例えば単に時間を潰したり喉の渇きを癒やしたりするためにコーヒーストアに入るような消費は、世俗的な(profane)消費と考えられる。
神聖な消費には、ritual(儀式)、pilgrimage(巡礼)、inheritance(相続)などが伴うという。なるほど、アップルファンが夜を徹してアップルストアに並ぶさまは巡礼を思わせるし、ファンは今も受け継がれる(相続された)スティーブ・ジョブズのDNAを愛している。このようなことは、自動車やファッションのプレミアムブランドでも見られる。
神聖な消費(お金の使い道)の元祖であろう宗教的な出費は、人間や自然をも超越したものに向けられた。それが人為的につくられた商品やブランドに向けられるようになったのはなぜだろう。雇用の流動化や核家族化が進み、特定の集団への帰属意識を感じることは少なくなった。儀式や巡礼を通じて、帰属意識が感じられる集団やコミュニティーを、現代の消費者は求めているのかもしれない。
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