米中貿易摩擦の激化に金融市場が揺れた8月、米国の有名大企業で組織されたロビー団体であるビジネス・ラウンドテーブルが出した声明が注目された。
企業の目的を従来の「株主第一主義」から、顧客、従業員、サプライヤー、地域社会を含むすべてのステークホルダーの利益に責任を果たしていくことに変えるという。具体的な施策はまだ何も示されておらず、その本気度に疑問を呈するメディアもある。
だが、米国のCEOたちにとっても、格差の拡大、中間層の消滅の問題は無視しえないリスクになってきたのだろう。若者の間では社会主義的な規制や税制を求める声も広がっている。トランプ政権の下では反グローバリズムが極端な排外主義にも発展しうる。
格差拡大の背景には東西冷戦の終結後、英米を中心に資本主義の勝利が喧伝され、市場原理、株主第一が主張されたことがある。レーガノミクスの下で、大企業や富裕層への減税などが当たり前になっていった。政策や制度を決めるのは政治だが、米国では企業がこれに大きな影響力を行使してきた。
資金が有効に使われない
SBI証券の北野一チーフストラテジストはかねて、企業の売上高をステークホルダーごとの取り分で説明することで問題点をクリアに指摘してきた。
大企業は売上原価(帰属:下請け)や販管費(同:従業員)を低く抑え、かつ政策的に金利(同:銀行)と法人税(同:政府)が引き下げられたため、純利益(同:株主)を極大化できた、という。
つまりROE(自己資本利益率)の追求であり、その裏側で、労働分配率は長期にわたり低下していった。消費性向の高い層に資金が回らず、経済が停滞した。
さらに、「企業の資本コストが上昇しハードルレート(最低限必要とされる投資収益率)が上昇していったことで、企業は国内の成長に向けた投資をやめてしまった」とSBI証券の北野氏は話す。
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