8月、フランスで行われた主要7カ国(G7)首脳会議の最終日。トランプ米大統領は、一族がマイアミ近郊に所有するリゾート施設「トランプ・ナショナル・ドラル」を次回会議の会場にしようと提案した。「フロリダ州屈指の舞踏室(ボールルーム)」を備えた夢のような空間だという。またしても、メディアを使って“トランプ神話”を拡散しようとしたのだ。
自らの成功イメージを人々の脳裏にすり込むのに、トランプ氏はずば抜けた才能を発揮してきた。富をひけらかし、美女をはべらせ、名を上げる。このようにして存在感を高める手法を、トランプ氏は1983年までに完全に自分のものにしていた。米紙ニューヨーク・タイムズが同年に掲載した記事「トランプの帝国とエゴ」によると、同氏は当時すでに「世界の超富裕層が憧れるニューヨーク市の国際的な象徴」になっていた。
トランプ氏のプロレス好きは有名だが、“やらせ”を本物と思い込みたいファンが群がるのがプロレスというエンターテインメントだ。同氏はそうしたプロレスの演出術を自家薬籠中のものとし、あらゆる場面で自身の影響力拡大に利用してきた。それが高じてか、2007年には実際のプロレスでも場外乱闘のやらせに加わっている。
04年にリアリティー番組『アプレンティス(実習生)』のホスト役に招かれたのは、まさに僥倖(ぎょうこう)といえた。出演者がトランプ氏の会社で本採用を懸けて生き残りのバトルを繰り広げるテレビ番組で、「おまえはクビだ!」がトランプ氏の決めぜりふだった。
この番組をバネに不動の人気を手にしたトランプ氏は、現実世界でも『アプレンティス』の役柄を演じ続けている。16年に共和党から大統領候補指名を受けたときには「(落日の米国は)私1人で立て直せる」と言い放った。そして大統領になるや幹部を次々にクビにし、忠誠心に少しでも欠ける者がいれば政権から追い出した。
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