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『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』 緩くつながり、ときに裏切り、香港で見たアングラ経済の姿

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チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学(小川さやか 著/春秋社/2000円+税/273ページ)書影をクリックするとamazonのサイトにジャンプします。
[Profile] おがわ・さやか/立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。1978年愛知県生まれ。専門は文化人類学、アフリカ研究。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程単位取得退学。博士(地域研究)。著書に『都市を生きぬくための狡知』『「その日暮らし」の人類学』。

香港の中心街に立地するチョンキンマンション。安宿が密集するこの建物は、沢木耕太郎の『深夜特急』に登場したこともあり、今でも日本からの旅行客を引きつけている。

2016年に香港の大学に客員教授として所属した著者は、ひとりのタンザニア人、カラマと知り合う。彼は「チョンキンマンションのボス」と名乗った。

「ボス」の日常は怪しさに満ちあふれていた。毎日、昼ぐらいに起き、夜な夜な仲間とたむろ。仕事は中古車ブローカー。インターネットを使って母国と香港の業者の取引を仲介している。大して働いている様子はないものの、月に数万ドル稼ぐこともある。

経済人類学者の著者が彼らの商慣行や起業家としての側面に関心を寄せるようになったのは自然の流れだった。本書は国家の制度などに守られない彼らがいかに自前で生きるかに迫っている。

ネットで個人間で売買するための商品情報を提供する仕組みは21世紀の今、シェアリングエコノミーとして注目を集めている。興味深いのは、彼らは専用の売買サイトを構築しているわけではなく、インスタグラムなど既存のSNS(交流サイト)を活用しているところだ。おしゃれに着飾った自らの写真に、中古車の情報をまじえて投稿する。

そこには専用サイトに見られるような利用者による相互の評価付けなど、運用を効率化する仕組みは存在しない。信頼を担保するのが難しい中でも、「危険な他者」を積極的には排除しない。

こうした仕組みは香港のタンザニア人社会全体に通底している。例えばお金がない仲間にはおごるし、住む場所に困っていれば、自宅に泊める。事故や病気で仲間が亡くなり、母国に遺体を送るお金が家族になければ皆で出し合う。即座のお返しを求めないし、一期一会の関係も少なくない。

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