「It's the economy, stupid!」(バカ野郎、とにかく経済なんだよ!)
これは1992年の米大統領選挙で現職の父ブッシュ大統領を破ったクリントン陣営の選挙参謀であったジェームズ・カービル氏が掲げた選挙スローガンだ。
米大統領選で勝敗を決する最大の要因とされるのが経済である。戦後の歴史を振り返るとトルーマン(第33代)以降で再選を逃した大統領は、暗殺されたケネディ(第35代)を除けば、カーター(第39代)と父ブッシュ(第41代)の2人しかいない。いずれも景気後退期に再選を迎えている。
足元の米国経済を見ると景気拡大は今月で10年となり史上最長記録を更新中。雇用拡大も前政権時代から104カ月(史上最長)を超える。トランプ大統領の不支持率は5割を超えて相変わらず高いが、こと経済政策・運営については5割超の国民が彼の手腕を評価している。
直近の雇用統計では鈍化の兆しも見えるが、失業率は依然として低水準で推移している。そんな実体経済の好調さと正反対にマーケットは5月には大きく下落した。貿易戦争や中東情勢の悪化が背景にある。「5月に売り逃げろ」の格言が今年は現実味を帯びた。株式市場のみならず、経済の風見鶏とされる国際商品も原油や銅の価格が大幅に下落している。リスク資産から逃避したマネーは米国債や金市場に流入し価格を押し上げている。
トランプ氏が経済やマーケットへの負の影響を覚悟でメキシコや中国、イランをたたくのは、好調な経済が背景にあるからだ。経済が好調なうちに再選へのアジェンダである国境・移民・貿易・中東問題などで一定の成果を上げておきたいのだ。FRB(米連邦準備制度理事会)やサウジアラビアにツイッターで圧力をかけて口先介入するのも、経済とマーケットを崩さないためのトランプ氏ならではの作戦と思ったほうがいい。幸い米金利も油価もピークアウトして軟調な地合いが続く。まんまとトランプ氏の術中にはまっているということだ。
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