10月に予定されている消費増税が7月の参議院選挙の争点の1つとなる中で、増税に反対する「反緊縮」的な経済政策をめぐる議論が盛んになっている。中でも、オカシオコルテス下院議員など米民主党左派に影響を与え、日本でも大きな注目を集めているのがMMT(現代貨幣理論)である。MMTはアベノミクスに代表される量的金融緩和による景気対策を批判し、不況期には明示的財政ファイナンス(OMF)による雇用確保を優先させることを主張する。MMTの主張者は、自国通貨でファイナンスされる政府部門の債務が拡大することが景気拡大の条件だとして、財政均衡主義を強く批判している。
米国メディアでは、リーマンショック以降、政府主導の積極的な投資拡大で景気回復を図ってきた中国こそMMTの主張の実践例である、といった声も聞かれるようになっている。
確かに、財政政策と金融政策が一体化しがちで、民間投資が落ち込むと素早く政府が投資を拡大させてきた中国のマクロ経済政策は、一見「反緊縮」のお手本であるように思える。
しかし、それらの議論が見逃しているのは、リーマンショック後に行われた投資のほとんどが正規の財政支出ではなく、地方政府主導で設立された「融資プラットフォーム」と呼ばれる民間のダミー会社の借り入れや、地方政府の土地使用権の売却資金によって賄われた、という点だ。中国政府の財政赤字がこれまでGDP(国内総生産)の3%を上回ったことはなく、国債の発行額も極めて抑制的だ。景気対策が公的債務ではなく民間部門の債務の拡大によって担われたことは、金融部門のリスクを増大させ、その後の中国経済にはデレバレッジ=債務削減を通じたデフレ・緊縮圧力が継続的にかかることになった。
また、1990年代後半以降の国有企業改革に伴う従業員の大量リストラ(下崗)に代表されるように、中国政府はむしろ経済の効率性とグローバル化を最重要視し、そのためには失業者の増加もいとわない、反緊縮とは相いれない新自由主義的な政策をとってきた。
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