4月に本欄で筆者は予測不能のトランプ流交渉術がはらむリスクについて警鐘を鳴らした。早速そのリスクが顕在化してきた。
トランプ政権は5月10日、中国からの2000億ドル相当の輸入品の関税率を現行の10%から25%に引き上げる、と発表した。13日には、まだ追加関税対象外である輸入品3000億ドル相当に対しても最大25%まで関税をかける用意があると警告した。USTR(米通商代表部)は6月17日を期限にパブリックコメントを募集。6月末に大阪で開かれるG20サミットに合わせた米中首脳会談で、中国側に決断を迫ると思われる。
トランプ大統領は関税攻撃に加え、15日には米企業に対し中国通信機器最大手・ファーウェイからの製品調達を禁ずる大統領令に署名した。米商務省が追随して、ファーウェイとその関連会社を米輸出管理規則に定めるエンティティーリストに入れることを発表。これにより同社は米商務省の承認なしには米企業から部品を調達できなくなり、一部製品の製造が停止するのは必至だ。
昨年も中国の通信関連機器大手・ZTEが本制裁により経営危機に陥り、トランプ大統領が介入して最悪の事態を回避した経緯がある。被害は中国企業にとどまらずその製品をサプライチェーンに組み込むグローバル企業にも及ぶ可能性が指摘されている。
関税と制裁という武器を使って交渉相手を崖っぷちに追い込み、譲歩を引き出すのがトランプ流交渉術。その過程でマーケットは一喜一憂して乱高下することになる。
一方で日欧に対しては、懸案の自動車と自動車部品への通商拡大法232条適用を半年延期するとした。その間に厳しい要求を突きつけて譲歩を引き出す作戦であり、たとえ相手が同盟国であっても容赦はない。以前も書いたとおり、自動車関税については米議会も業界も反対しており、自国の消費者と経済へのダメージを考えれば、同盟国である日欧に対して安全保障上の脅威を理由に伝家の宝刀を抜く蓋然性は、高いとは思えない。だが、譲歩を得るためには手段を選ばず、と思っておくのが賢明だ。
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