4月6日号の本コラム「アベノミクス6年間での『発見』」で、筆者は全要素生産性(TFP)の低迷という事実を指摘したうえで、その原因を考えるのが経済学者・エコノミストの責務だと述べた。筆者自身まだ確たる答えを得るに至ってはいないが、今回は現時点で考えられる2つの仮説を紹介してみよう。
第1は、閉鎖的な日本企業がオープンイノベーションの時代に適応できていないという問題である。バブル崩壊後も10年余り前にはデジタル家電のシャープ亀山モデルや省エネ車のプリウスなど、世界に誇る日本製品があった。しかし今、そうしたものはなかなか思いつかない。社内で製品開発を行い、社内で量産化を進めるというビジネスモデルはもう終わったのだ。
事実、注目の5G(第5世代移動通信システム)でも日本企業の存在感は薄く、ユニコーンと呼ばれる新興企業の数ではASEAN諸国の後を追いかけているのが日本の実情である。
アベノミクス景気で多くの企業が史上最高益を更新し、日経平均株価も2万円を回復したために、日本企業の競争力は回復したと誤解している人も少なくない。だが、それは多分に円安に伴う企業収益の水膨れの結果だ。逆に円安に伴って、1人当たり名目GDP(国内総生産)の世界ランキング(ドルベース)で、日本は2012年の第15位から昨年は第26位まで低下してしまったという事実がある。
第2の仮説は、経済政策に原因を求めるものだ。これは、小泉構造改革後にいったん高まった生産性上昇率がその後一貫して低下していることが示唆している。小泉政権は、不良債権処理を通じて企業にリストラを迫り、派遣労働の規制緩和により大量の非正規雇用を生み出した。公共事業の大幅な削減が地方経済の疲弊を招いた一方、工場等制限法の撤廃は大学の都心回帰を加速した。こうした格差=痛みを伴う改革が生産性向上に寄与したと考えられる。
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