以前、本コラムで「財政政策に奇策はない」と論じたが、相変わらず(政治家を含めて)人々は奇策が好きなようだ。
中央銀行が国債をすべて購入すれば国の借金は解消するという「ヘリコプターマネー論」や、政府が財政再建しないことにコミットすれば人々の消費・投資意欲を喚起し脱デフレにつながるという「シムズ理論(財政の物価理論)」が流布したかと思うと、今度は「現代貨幣理論(MMT)」である。
MMTは、主要な提唱者のケルトン教授(米ニューヨーク州立大学)が2016年米大統領選挙の予備選で旋風を起こした民主党のサンダース議員の顧問を務めていたことなどから注目が集まった。その主張の核心は「通貨を発行する権限があって自国通貨建て国債を発行する政府は、財政政策において財政赤字や債務残高などを考慮する(財政再建に努める)必要はない」というものだ。
要するに政府は財政的な「制約」に直面しない。むしろ、政府は完全雇用の実現・維持に向けた経済政策に特化することが望ましい。なぜか。政府は(中央銀行と協調して)自らの借金を貨幣の発行(いわゆる「財政ファイナンス」)でもって賄うことができるからだ。
主流派の経済学者も、リーマンショック後の不況時のように消費・投資の総需要が不足しているときには「例外的な環境における需要管理手段」として財政赤字による財政出動に同意する。しかし、平時でも大幅な財政赤字を続けることには金利の上昇やインフレのリスクがあるとする。このため、MMTは「平時の経済政策の手引きにならない」との批判も多い。
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