3月に鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は台湾南部の最大都市・高雄で、同市の韓国瑜(かんこくゆ)市長とともに記者会見を行った。データセンター関連機器の製造工場を高雄市内に新設することを発表するためだ。
郭氏は「データ関連の工場は敏感な場所には設置できない」として、中国でなく台湾に建設する意義をアピールした。ところが鴻海社内でも、いつになったら投資が実行されるのかは不明だという。
鴻海には「前科」がある。2008年に投資を発表した高雄軟体科技園区(ソフトウェアパーク)では、投資の実現が遅れに遅れた。鴻海は最終的には研究開発施設を建設したものの、正式な運用開始は8年後の16年だった。
そのため地元住民からは「再び紆余曲折があるのだろう」と冷ややかな声が出る。台湾と中国のビジネス状況に詳しい台湾・産業情報研究所の陳子昴上級産業顧問は「08年の投資は、中国との融和を訴える中国国民党(国民党)の馬英九(ばえいきゅう)氏が総統になったことが背景だ。今回の投資も、中国と親和性が強いとされる韓氏(国民党)が高雄市長になったから決めたのではないか」と状況の類似性を指摘する。台湾総統選への出馬にも意欲を示した郭氏の政治性の高さが背景にあるとみる。
実際、高雄市政府の関係者は「鴻海は投資すると約束してくれたが、詳細はまだ何も決まっていない」と明かす。さらに、肝心の立地ですでに意見の食い違いが起きているという。
高雄市は同市南部の大発工業区に鴻海の新工場を誘致したいと申し出た。しかし、大発工業区は石油化学や金属関連の工場が集中し、決してハイテク産業の集積地ではない。
高雄市には「鴻海が(大発)工業区の新たな産業発展の象徴になれば」(同市関係者)との期待がある。ただ、鴻海側は難色を示し、ハイテク産業の拠点がある高雄市北部の楠梓加工区や南部科学工業園区を希望しているという。南部科学工業園区には鴻海グループで世界3大液晶パネルメーカーの一角である、イノラックスの工場がある。
この記事は有料会員限定です
残り 634文字
