マーケティングに関する典型的な誤解は、それを広告宣伝などプロモーション活動に限定して考えることだ。ペイパル・マフィアのドン、投資家のピーター・ティールはその著書『ゼロ・トゥ・ワン』の中で次のような主旨のことを語っていた。
スタートアップが犯す失敗の典型は、よい商品をつくればマーケティングは不要だと考え、プロモーション活動を軽視することなのだと。これはかなり本質を突いた警告である。よい商品をつくるだけでなく、それを広告宣伝で世間に広く知らせることも企業の「義務」である。松下幸之助の思想とも通じるものだ。
「よい商品をつくると、自然と評判が広がり売れていく」のであれば、例えば、日本中の老舗の酒蔵で杜氏(とうじ)が丹精込めてつくる日本酒は、みんな「獺祭(だっさい)」のようなヒットになるはずだ。だが、本来マーケティングの出発点は、よい商品の定義だ。その意味において、実はティールの警句でさえ、マーケティングを広告宣伝に限定し、狭く捉えている。
全体像を捉える方法
有名な「マーケティングの4P」を思い出してほしい。プロダクト=商品、プライス=価格、プレース=販路、プロモーション=広告宣伝。商品もマーケティングの一部だ。
マーケティングの教科書的な定義はわかりづらいので、マーケティングの4Pは、その全体像を理解するのにとても便利だった。だが、だんだんとビジネスの実態にそぐわなくなり、今はそのまま実務に使われるケースは少なくなった。裏返して見ると、実際のマーケティングにおいて、その全体像を捉えることは非常に難しい。
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