トランプ大統領に「取引」はあっても「思想」はないとバッサリ切り捨ててしまうのは、米国に思想や哲学がないとあっさり片付けてしまうのと同じで、浅はかだ。大統領本人は自覚していなくとも、滔々(とうとう)とした思潮に流されて、日々刻々の決断を行っている。
米国における深層の思想潮流として指摘されるのが、リバタリアニズム(自由至上主義)だ。トランプはそれと共鳴することもある。しかし、ほかの潮流も彼を突き動かす衝動となって現れ、そこにせめぎ合いが生じるから、単純ではない。
昨年12月、トランプは突然、シリアに展開する米軍の全面撤収とアフガニスタン駐留米軍の半減を発表した。マティス国防長官ら側近の反対を押し切っての決定だったから、マティスは国防長官の辞任に至った。
突然の決定は「トルコのエルドアン大統領にうまくはめられたからだ」という観測も出たが、むしろランド・ポール上院議員(共和党)の影響という見方が有力だ。ポールはリバタリアン政治家の代表格だ。父親のロン・ポール元下院議員(共和党)もリバタリアン政治家として活躍し、大統領選挙へ立候補したこともある。
リバタリアンは個人の自由を至上と考えるから、政府の肥大化には反対であり、政府権力が極大化する戦争を忌避する。つまり反戦であり、外交では非介入の孤立主義傾向を示す。タカ派が多い共和党では異分子だ。
2016年の大統領選では、ポールは反トランプの急先鋒だった。だが最近では、タカ派の上院議員リンゼー・グラム、トム・コットンらと並んで、トランプに極めて近い政治家と見なされている。トランプとはゴルフ友達でもある。
シリア、アフガンからの米軍撤退は、リバタリアンとしてのポールの年来の主張だ。撤退は自身の選挙公約でもあるから、トランプはポールの説得をすんなり受け入れたとみられる。トランプは突然の発表前に、ポールと頻繁に電話でやり取りしていた。
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