インド洋の北西、西は紅海に接するアデン湾で中国海軍が海賊対処活動に参加し始めてから10年が経過した。中国では、「護航(航行護衛)」行動と呼ばれており、人民解放軍機関紙の解放軍報などが10周年を特集して海軍の活動をアピールした。
中国海軍は、2008年12月26日に初の護航を開始して以来、今年1月までに艦隊を31回派遣しており、民間海上輸送の安全に貢献していることは間違いない。しかし、中国の護航には、単なる国際貢献以上の目的もあるようだ。
中国の護航の主要な内容は「当該海域(アデン湾)を航行する中国船舶の人員の安全を守ること」および「国連世界食糧計画(WFP)など国際機関の人道支援物資を輸送する船舶の安全を守ること」であるとされる。
実際には、中国海軍は、他国海軍との共同も行い、船舶全般の護衛に当たっている。一方で、中国艦艇がつねにアデン湾に存在することは、中国が周辺地域に対して軍事プレゼンスを示すことにもなる。ただ中国は、軍事的威圧と取られないよう、護航を通じて国際社会でのポジティブなイメージを得たいと考えている。それは、「責任を果たす大国」というイメージだ。護航10周年を祝う複数の記事の中にも、「大国が責任を果たす」という表現が用いられている。
国内にアピールの必要
しかし、中国が自らを大国であると示すのは国際社会に対してだけではない。解放軍報などの読者の大多数が中国国民であることを考えれば、中国が先進諸国に伍して国際貢献を行う大国であるというイメージを、国内へアピールするものだということが理解できる。「中国は誇らしい大国である」と自国民に誇示することは、中国共産党が正しく中国を導いてきたと主張することでもある。貧しく弱かった中国を、豊かで強い大国にしたということになるからだ。とくに、米国の経済制裁などによって経済がダメージを受け、習近平指導部の対米政策および経済政策が批判される中、こうしたアピールは、共産党統治の正当性を維持するための重要な手段となりえる。
この記事は有料会員限定です
残り 678文字
