「急に襲撃を受けたので、対応できませんでした」
「ゆっくりな襲撃なんかあるか。コバート(限界まで自分たちの存在を秘匿する作戦)であろうと、オバート(スピードを重視するため自分たちの存在の秘匿をあまり重要視しない作戦)であろうと、敵は発揮できる最大スピードで襲撃してくるに決まってるだろ。バカ」
これは、特殊部隊候補生と彼らを指導中の私が交わした会話である。
「対応できなかったのは、急に襲撃されたからだと本当に思っているんだったら、おまえは今後どんなやつの襲撃を受けても必ず殲滅される。なぜなら、襲撃を受けている最中に自分の判断ミスや劣勢の原因を探り、次の判断を下していかなければ、主導権を奪い取れず、殲滅を免れることなんかできないからだ」
「はい……。私は決断力がないのかもしれません。即断即決できる気がしません」
「決断力なんか能力じゃねえよ。決めりゃいいだけだ。問題なのは、おまえが考えていないことなんだよ。周囲から『仕方なかった』『どうしようもなかった』と言ってもらえて、自分が救われる理由を探しているだけなんだよ。一分一秒を争ってるときに、そんなどうでもいいことに時間を使っちまうから、決断にたどり着かねえんだ」
このせりふは、機会のあるごとにほぼ全員の特殊部隊候補生に言った。平時における失敗の原因は、規則や標準的手続きに従って処置しなかったことである場合がほとんどだが、非常時は、規則などが適合しなくなってしまっているために個人が判断しなければならない。となれば失敗の原因は、自分の判断ミスということになる。
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