自衛隊を退職した後、私はフィリピンのミンダナオ島を拠点としたが、一時期サイパンに住んでいたこともある。当時はよく水中銃を手に潜った。魚を撃つためだ。
水面で息を限界まで吸い込み、水深5~10メートルの海底に向かう。海底に着くと、身体が周囲に同化するまで少なくとも1分間はジッと岩にへばりつく。そのうち同化した侵入者に気づかない魚がうろつき始め、私はその中から食べ頃の魚に水中銃を向ける。もちろん、引き金を引く直前にこちらの殺気を察して、猛スピードで逃げる魚もいる。
ある日、私は逃げ去る魚の動きに見とれた。
魚が急激に泳ぎを加速する際、身体のどの部分を激しく動かすか、ご存じだろうか?
私は尾びれの付け根が激しく動くと思っていたが、それは大きな間違いだった。
海上自衛隊に20年在籍し、そのうちの10年近くはコンバットダイバーとして海中で多くの時間を過ごしていたのに、私は何もわかっていなかった。海に生きる大先輩の魚類が水の中でどうパワーを生み出しているのか、知ろうともしていなかったのだ。
強い力を生み出す原理
急速に逃げ去る魚は、背骨全体をムチのように波打たせていた。結果、ムチの先端に当たる尾びれが激しく速く動き、一瞬のうちに水中銃の射程外に移動したのである。
これは魚類だけの話ではない。すべての脊椎動物は、背骨をムチのように波打たせて強いパワーを作り出す。背骨の周囲にある筋肉が緊張と弛緩を繰り返し、背骨をウエーブさせているのだ。
1カ所の筋肉をよく観察すると、緊張したのと同じ時間、弛緩している。弛緩している間は別の筋肉が緊張している。それらの動きが連なり、調和することで、1カ所に負担が集中せず、全体として強いパワーを生み出す。
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