「十分です。あなたたちは十分な知識と技術を持っています。私から教えることはもうありません」
創設間もない特殊部隊のわれわれに、レンジャー技術のすべてを教えてくれた陸上自衛官がそう言った。彼は通常のレンジャー教育以降も、実践的な技術を徹底的に教えてくれた。そこまでしてくれたのは、レンジャー教育を終えた直後の私の発言が原因だった。
「これっぽっちのことを教えるのに3カ月もかけて、効率が悪すぎるよ。簡単なことを難しく説明して、頑張った体験をさせているだけでしょ。われわれが必要としているのはこの上のレベルだよ。教わったレベルじゃ、実戦闘では使いようがない」
教わる立場にもかかわらず、私はたいへん生意気な口を利いた。だが、彼は気分を害するわけでもなく、その後も面倒を見てくれた。そして、「教えることはもうありません」と言ったのだった。
そのとき、私はまず謝意を口にしたが、「俺の言ったとおりじゃねえか! 合理的に効率的に教育すれば短時間で終わるんだ」という思いが抑えきれず、恩人である彼に率直に伝えた。
「この効率性の件は、決して問題視されることがない自衛隊の抱える闇だと思うんです。いや、もしかしたら国というレベルにまで及ぶ大きな闇かもしれない」
私は訴えるように彼に言った。
「自衛隊の教官は、残念ながら被教育者の能力を効率よく引き上げることに徹していないと思う。あまり好きな国ではないけど、アメリカ、米軍は違うよ。彼らは、難しいことをどう簡単に教えるのかに徹している。自衛隊は、何でもかんでも難しく説明して、その技術が身に付いている教官自身を大きく見せようとばかりする」
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