政府は、今年4月に任期満了を迎える黒田東彦日本銀行総裁を再任する人事案を国会に提示した。足元で内外の株式市場が不安定な動きを続ける中、この人事は金融政策に関する不確実性を低下させ、市場を安定化させる効果をもたらすと期待されている。再任により、現在の経済・金融環境の下で、いたずらに追加緩和措置が実施される可能性はかなり小さくなったといえる。
ところで、金融政策方針の柱であるはずの2%の物価目標の早期達成には失敗していながら、それでも政府が黒田総裁を再任するというのは、政府は本音では、2%の早期達成をもはや重視していないことの表れと解釈できるのではないか。これは、2期目の黒田体制の下で日銀が、2%の物価目標の位置づけを修正し金融政策の正常化を進めていくことを、より容易にすると考えられる。金融市場では黒田総裁の再任、リフレ派の副総裁指名によって正常化への道が遠のいたと見る向きもあるが、これは正しくないだろう。
日銀がマイナス金利政策解除やETF(株価指数連動型上場投資信託)などリスク資産の買い入れペース縮小などの正常化策を実施するためには、2%の物価目標の達成を、短期ではなく中長期で目指すよう変更するなど柔軟化し、物価目標から切り離した金融政策運営ができるように方針を修正する必要がある。こうした修正は政府の強い反対を招くことなく実施することが可能だろう。
今年9月に予定される自民党総裁選挙の前に、現政権が経済政策の実績をアピールする目的でデフレ脱却宣言を行い、それと示し合わせる形で、日銀が2%の物価目標の柔軟化に向けた市場との対話を始める、といったシナリオも考えられる。その場合には、2%の物価目標の柔軟化は2019年前半、マイナス金利解除など正式な正常化策の実施は消費税率引き上げの有無やその実施時期にも配慮しつつ19年後半、といったスケジュールが考えられる。
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