「チリのバルパライソだよ」とY氏は即答した。5年間かけて世界中を旅したY氏にいちばんよかった所を尋ねたときのことだ。それから十数年にわたり、バルパライソという名が頭の片隅にあった。
2017年12月、ソウル発8万4600円の世界一周航空券を使って、そのバルパライソを訪れた。
バルパライソはサンチアゴの西約120キロメートルの太平洋沿いにある。南米最大の港湾都市として栄えたが、パナマ運河の開通により衰退した。
「天国の谷」を意味するバルパライソは海岸近くまで崖が迫っており、色とりどりの住宅がその斜面を覆い尽くしている。この斜面の上り下りのため、アセンソールと呼ばれるケーブルカーが19世紀半ばから20世紀初頭にかけて数十基造られ、今でも6基が住民の足として活躍している。
治安がよくないと聞いていたが、アセンソールに乗って丘に上がると外国人観光客だらけだ。03年に世界文化遺産に登録されてから、特に増えたらしい。
Y氏が言うように天国なのかどうかはわからないが、この町で1カ月くらい隠居してみたい空想に駆られた。
チリの多様性を表現
夜はサンチアゴで店を予約していた。その名は「ボラゴ」。世界のベストレストラン50で17年は42位にランクインしているこの店は、ヌエバ・コスタネラと呼ばれる高級住宅街にあった。
店先では若い料理人がつきっきりで1メートルはあろうかという2頭の羊肉を炭火で焼いている。焼き時間を尋ねると、「このサイズなら9~10時間かな」と英語で即答。期待感が高まる。
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