2017年12月、ソウル発8万4600円の世界一周航空券で最初に訪問した都市はスペインの首都マドリードだった。
滞在時間は18時間。こういうときは目的を絞り込み、それ以外を切り捨てるしかない。今回の目的は食に絞った。時間のロスを減らすため、宿はレストランから徒歩圏内の旧市街にした。バス・トイレ共同で1泊3100円の安宿だが、どのみち寝るだけなのだ。
スペインの夜は遅い。多くの店でディナーの予約は21時から。日本ならラストオーダーの時間だ。
今夜のレストラン「ラ・テラサ・デル・カシノ」はミシュラン2つ星、スペインのグルメガイド『ギア・レプソル』でも最高の評価の太陽3つを獲得している。店名のカシノの名のとおり、「カシノ・デ・マドリード」という会員制カジノの最上階に入っている。
このカジノには会員制クラブや図書館も備わっている、大人の社交場だ。会員になるには2名の推薦と入会金7513ユーロ(約100万円)が必要だが、レストランは誰でも利用できる。
レストランに行く前に1200人収容できるという宴会場をのぞくと、巨大なシャンデリアと壁画に囲まれ、ドレスアップした紳士淑女がひしめき合っていた。日本では到底体験しえない光景である。
扉を手で開閉する古風なエレベーターで最上階に上がると、うって変わり白を基調とした未来的な装飾のレストランにたどり着く。
前衛的な料理
料理はコシナ・ヌエバ(新しい料理)と呼ばれるモダンスパニッシュ。液体窒素やアルギン酸などを用いた前衛的な料理が続く。だが、こうした料理よりも、メルルーサののどの部分の肉にタラの皮のゼラチン質をオリーブオイルと乳化させてカレー風味をつけた、バスクの伝統的な料理のほうが印象に残った。
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