「怪獸大廈」とはうまいこと名付けたものだ。香港島東部、太古にその集合住宅はあった。
この地区にある5棟の高層住宅は今、ネット上で怪獸大廈とまとめて呼びならわされている。1970年代前半に建てられ、老朽化が進んだ集合住宅の中庭に出て、夜空を見上げてみた。
三方には20階ほどの高層住宅のバルコニーが張り出し、残る一方にも超高層住宅がそびえる。狭い空には、地上の明かりに照らされた低い雲が流れている。
2013年、フランス人の写真家がこの住宅を写した芸術的な作品がブームの端緒となった。翌年には映画『トランスフォーマー/ロストエイジ』のロケ地として注目を集め、17年にはここを舞台に女優の満島ひかりが華麗に舞うPVも発表されている。
その特異な景観から、怪獸大廈は若者の聖地となった。今年6月の訪問時も男女3人がポーズをつけて撮影にいそしんでいた。もはや誰もが知っている有名観光地よりも、こうした奇観のほうが投稿のインパクトは強い。SNSを生活の中心に据える世代ならではの選択ともいえる。
怪獸大廈の大通り沿いに不動産業者の店舗があった。築44年、30平方メートルで約8060万円。思わず二度見してしまう価格だ。住宅市場に関するサイト、デモグラフィアによれば世界406都市のうち、香港が7年連続で住宅費第1位を維持。住宅価格は世帯年収の18倍に達しているという。
香港はもともと土地が狭いうえ山が多く、住宅用地は約7%にすぎない。そこに中華人民共和国から断続的に人口が流入し続けた。高層住宅を建設するも追いつかず、住宅価格は上昇を続けている。
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