トランプ米大統領の経済政策で懸念されるのが貿易についての言動だ。主な問題点をまとめてみると、(1)そもそも経常収支、貿易収支は、経済政策上の目標とするようなものではない、(2)ましてや、2国間、品目間の貿易収支については議論の対象にすること自体が間違い、(3)自由貿易を促進するために重ねてきた各国の努力が無になりかねない、(4)米国の対日貿易赤字が大きいのは、日本側に不公正な点があるからではない、などである。
同じような議論は、1980年代から90年代にかけての日米摩擦の過程で繰り返されてきた。しかし、原則論で対抗しても全然話にならず、結局は日本側から何らかの「お土産」を工夫することになった。これは、私のようなエコノミストから見るとまったく悪夢のようなものであった。
2月10日の日米首脳会談の結果、麻生太郎副総理・財務相とペンス副大統領をヘッドとする新たな日米経済対話の場が設けられることになった。再びかつてのような日米交渉が繰り返されるのだろうか。それが繰り返されるとすればまさに悪夢だが、私は今回はそうとう事態は異なると考えている。当時と比べて日米を取り巻く環境がそうとう変化しているからだ。
第一に、マクロ経済政策という点では、80年代は財政出動が主に議論になったが、今回は金融政策が焦点になる可能性がある。
80年代は一貫して経常収支の黒字が名目GDPの3~4%に達する高水準だったことから、「内需の拡大によって黒字体質から脱却すべきだ」という議論が盛り上がり、日本政府は内需振興のために公共投資を大幅に拡大する計画を示すなどした。これに対して今回は、ドル高・円安傾向が続いていることもあって、日本の金融政策運営と円安との関係が議論になる可能性がある。
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